冷戦史 歴史

核兵器に関する認識の変遷

投稿日:2018年5月12日 更新日:

核兵器は「使用可能」な兵器か?

1945年7月に核兵器が初めて登場して以来、その捉え方は大きく変化していきました。今回は核兵器に対する考え方がどのように変化していったかを簡単に説明しようと思います。

※本記事は冷戦史第3回の下記コメントについての補足です。
『英国「地雷なら確実だな」』
『ニワトリ「出番のようだな」』
「ヒロシマ・ナガサキの長期追跡観察の結果も出てきました」

 

威力が強いだけの爆弾?

1945年7月、アメリカは史上初の原爆実験に成功し、核兵器が初めて登場しました。このときは、放射能についての知識が乏しく、一般的には単なる威力が格段に強い爆弾といった程度の認識しかなかったようです。

1945年8月にアメリカは広島・長崎に原爆を投下しますが、これが被爆地の人々を何十年にも渡って苦しめることになったのです。

 

核兵器の応用

最初の核兵器は航空機から投下される「爆弾」として製造されましたが、その桁違いの破壊力からすぐに他の兵器に応用されました。具体的には次のような事例があります。

核砲弾は大砲の弾頭に核兵器を搭載したものです。言い換えるなら、大砲で核爆弾を遠くに飛ばして爆発させようというコンセプトの兵器です。アップショット・ノットホール作戦(核実験の一つ)では、核砲弾の爆発直後に軍事行動が可能か検証するため、約2万名の兵士がキノコ雲の下で演習を行い被曝しています。

核地雷はソ連の地上部隊を攻撃する目的で、西ドイツへの配備が検討されました。この核地雷に関しては、冬場の低温で電子機器が作動せず起爆しない恐れがあったため、ニワトリの体温で機器を温めるというユニークな対策が考えられましたが、結局計画のみで配備は実施されませんでした。

他にも、核爆雷、核魚雷、核を使った空対空ミサイル(核爆発で敵の爆撃機編隊を一網打尽にすることを狙った)などが、開発されました。こういった応用は50年代~60年代にかけて盛んに行われました。

また、60年代~70年代にかけては、土木工事用の爆薬として核爆弾を利用する「平和的核爆発」が、ソ連を中心に行われています。

 

核兵器の使用検討

アメリカでは、1950年代中頃まで核兵器を使用可能な兵器ととらえていたようで、朝鮮戦争や第一次インドシナ戦争などで使用が検討されました。

また、アイゼンハワー政権で打ち出された大量報復戦略も実際に核兵器が使用可能な兵器であるという前提のもとで立案されています。

 

文明崩壊の恐怖

1950年代を通じて核兵器は多種多様な兵器に応用され、また核弾頭の数自体も急速に増加していきました。

50年代中ごろには、米ソの首脳陣が核戦争の脅威について意見交換をするようになり、ひとたび全面核戦争が起きれば東西両陣営は甚大な被害を受け、近代文明が破壊されたり、ひいては人類滅亡のおそれまであるということが共通の認識となっていきます。

また、この頃には広島・長崎の追跡調査の結果や、初期の核実験で被爆した人々の健康被害なども判明していました。

このように全面核戦争の脅威や放射能汚染の問題から、核兵器はあくまでも「抑止力」として保有するもので、「使用可能」な兵器ではないとの考え方が形成されていきました。

新たな兵器に対する無理解によって、核兵器が安易に使用されていたかもしれないと思うと、ぞっとする話であります。

 

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